いつもと同じはずの大広間。
けれども、その熱気と騒々しさは
いつもの何倍にもなっていた。


「ほら、。早く行くよ?」
「うん、ちょっと待って。」

リリーの明るい声が聞こえて
は椅子から立ち上がった。

少し残った朝食の乗った皿がカタンと鳴る。

そしてリリーといつもの彼らがいるところに
生徒の間を潜り抜けて駆けて行った。

なぜ、今日はいつも以上にこんなにも
生徒がいたのか、一瞬分からなかった。

だが、思い出せば今日はバレンタインデー。
熱気が溢れんばかりに漂っているのは
当たり前なのかもしれない。


現に、も今日は小包をポケットに忍ばせている。

いつものお礼、と言いたい彼に。


そうして人の集まった大広間の周辺は
通りにくさが増したのは明らかだった。

「ごめぇん。」

ようやく、みんなのところにたどり着いて
そう謝ると、全員笑顔で許してくれた。

それから皆でグリフィンドール寮へと
向かって行った。



・・・はずだった。

しかし、人の足を踏まないようにと
下ばかり向いていたはいつの間にやら
みんなとはぐれてしまっていたらしい。

だが、慌ててみてももう後の祭り。

人垣のせいで、今自分自身が
どこに向かっているのかさえわからない。


「あーぁ。」


広い校舎にの小さなため息は聞こえない。

とにかく適当な角を曲がって、
それから道筋を考えようとした時、
くいっと腕が引っ張られるような感じがした。

はそのままよろめいて
引っ張られた方に倒れこんでいった。

ぽふっという布の柔らかい音と共に、
は何かにくるまれていた。


「大丈夫、?」

上から聞こえてきた声に反応して
素直に見上げると、そこにはリーマスがいた。

「あ、リーマス!どうして・・・?」
がいなくなったからね。
 その前から様子も変だったし。」
「あー・・・。」

そう言いかけて言葉を濁した。


周りには人がいない。


その状況を察知して、
そっと手をポケットに伸ばした。


「ここで杖とは物騒だね。」

笑いながら言ってくる彼に
少し頬を膨らませて見せて言った。

「そんなわけないでしょ。そうじゃなくって・・・。」

そう言ってポケットから小包を出して
両手に包んで彼の目の前に出す。

「バレンタインデーでしょ?
 だから、これ出そうとしてたの。」

手の平には赤い包装紙に包まれ、
金色のリボンの巻かれた小さな包み。

「グリフィンドールカラーだね。」
「あ、本当だ!」

今さらながら気付かされたことに
素直に驚きの表情を表す。

「これ、開けていいの?」
「はい、どうぞ。」

笑顔で返したにリーマスは
そっと包みを手にとって包装を解いた。

そして、その中のチョコレートを取って食べた。

「どう?美味しいといいんだけど・・・。」

心配そうに覗き込むを見て、
リーマスは一拍間を置いてから答えた。

「すごく美味しいよ。」
「よかったぁ。」

そう言って胸を撫で下ろすと
彼が静かに名前を呼んだ。

「ありがとう。」
「どういたしまして。」

そっとチョコレートを持ったままの彼の腕は
の背中に回りこみ、彼女を包んだ。

はそれに答えるようにした。

「ホワイトデー、期待しててね。」
「うん。」




~・後書き・~
何というか、ありきたりな設定・・・。
もう少しリーマスには美味しいを連呼して欲しかったですね~。
ただでさえ、広いであろうホグワーツの校舎。
管理人はただでさえ迷うのは大得意ですから
たぶんこんな環境だったら大変でしょうと
呟きながら書いてみました。
では、ここまでお読み下さりありがとうございました。
    '06/02/14